名古屋高等裁判所 昭和53年(ラ)16号 決定 1978年3月13日
抗告人 株式会社ニチカ
右代表者代表取締役 中垣勇夫
右訴訟代理人弁護士 伊藤宏行
相手方 株式会社潤工社
右代表者代表取締役 井上英雄
主文
本件抗告を却下する。
抗告費用は抗告人の負担とする。
理由
一 本件抗告の趣旨及び理由は別紙のとおりである。
二 当裁判所の判断
記録によれば相手方は抗告人に対して原決定の請求債権目録記載の特殊被覆電線を昭和五二年七月一八日から同年一一月二五日までの間に売り渡したこと、相手方の抗告人に対する右の売掛金債権の弁済期は、昭和五二年二月六日の原決定時にはすでに到来していたこと、相手方は抗告人において右電線を第三債務者に売り渡したことを前提として、民法三〇四条一項の物上代位の規定にもとづき原裁判所に本件債権差押、転付命令の申立をなし、同裁判所は審尋を経ないで昭和五二年二月六日右命令を発し、同命令は同月七日抗告人と第三債務者にそれぞれ送達されたこと、以上の事実を認めることができる。
右によれば相手方は抗告人に対する動産売買の先取特権者として民法三〇四条一項により抗告人が第三債務者から受くべき代金債権に対してその権利を行使することができるものであり、その権利行使の方法として本件債権差押転付命令の申立に及んだものということができる。
しかして審尋を経ないで発せられた債権差押転付命令については、不服ある利害関係人は、まず民事訴訟法五四四条にもとづき異議の申立をなし、この決定に対してのみ即時抗告ができるものと解すべきであるから本件抗告は不適法として却下を免れない。
なお債権差押転付命令は、債権者に第三債務者の無資力の場合の危険を負担させる反面、強制執行手続における平等主義の例外として債権者に独占的満足を得ることができるようにするという執行方法としてその存在意義を有するものであるから、債権差押転付命令が、第三債務者と債務者に送達されたときは、これによって執行手続は終了し、もはや手続内で不服を申立てることはできなくなるものと解すべきである。
よって抗告費用は抗告人に負担させて主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 綿引末男 裁判官 高橋爽一郎 福田晧一)
<以下省略>